屋根の中には塗装できない屋根材があります。
代表的な屋根材では、パミール、レサス、かわらU、コロニアルNEOなど、いわゆるノンアスベストスレート屋根材といわれるものが相当します。
これらの屋根材は、本来なら屋根材そのものの耐久性が低いため塗装が適さないのですが、塗装業者も知らずに塗ってしまっているケースがかなり多く、塗装から3ヶ月で屋根材の一部が落下してきたというお客様もおられました。
塗装できない屋根に塗装をしてしまうと、数か月~数年で劣化してしまって結局屋根工事が必要になってしまい、お客様にとっては二重に工事代金がかかってしまうため損をしてしまいます。
こちらの記事では、塗装できない屋根材の種類や特徴についてご紹介いたします。
塗装業者に屋根の劣化を指摘されて不安に思っている方、屋根の劣化が気になっているがどのような工事が適切かわからないという方はこの記事を参考にしてください。
塗装ができないノンアスベストスレート屋根材とは?
かつて多くの住宅で使用されていたアスベスト(石綿)は、耐久性が高い一方で、健康への影響が問題視されるようになりました。
アスベストへの健康被害が指摘されるようになると、屋根材を製造していた会社は、アスベストを含まない「ノンアスベストスレート屋根材」を開発するようになります。
これらの屋根材は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて製造され、アスベスト規制の影響を受けて広く使用されました。
この時期に製造されたスレート屋根を第二世代スレートやノンアスベストスレート屋根と呼ばれています。
ノンアスベストスレート屋根材は、従来のアスベストを含むスレート屋根材に比べると十分な耐久性を有していないため、早ければ8~10年で劣化が始まってしまい、社会問題になったものもあります。
そのため、現在では多くのノンアスベストスレート屋根材は生産中止となっています。
なぜ塗装ができないのか?
屋根材自体に耐久性がないので、塗装を行っても屋根材の耐久性を回復させることはできません。
元々スレート屋根は、主な素材がセメントであり、防水性を確保するために塗装を行います。そして塗膜が劣化すると防水性を失ってしまいます。
塗膜の厚さは基本的な三回塗装を行ってもせいぜい0.1ミリ(100ミクロン)程度のものです。
耐久性そのものがない屋根材に塗装を行っても劣化を止めることはできず、ひび割れなどの劣化は進行してしまいます。
そのためせっかく高いお金をかけて塗装工事を行っても、数か月~数年で屋根が劣化して落ちてきたり、ひび割れが進行して雨漏りを起こすこともあります。
劣化した屋根にはカバー工法や葺き替えが必要ですので、また工事費用が掛かってしまうのです。
また塗装を行うことでさらなる劣化を引き起こす可能性があります。
弊社に工事をご依頼いただいたお客様で、塗装工事を行ったのに、工事の三か月後に台風で屋根材が落下してお隣の外壁を傷つけてしまったという事例もありました。
塗装に向かない屋根材の種類と特徴
以下にて、塗装に向かない屋根材の種類と特徴について、製造会社ごとにご紹介します。
【ニチハ株式会社】
パミール
販売期間:1996年~2008年頃
特徴:パミールはノンアスベストのスレート材で、層間剥離(層の剥がれ)という特有の劣化を引き起こしやすいことで知られています。早ければ10年程度で劣化が始まり、ミルフィーユのように屋根がめくれてきてしまいます。築19年の住宅でパミールが台風による強風で飛散して近隣住宅に直撃するという飛散事故も発生しており、多くの住宅が使用したいたことから、社会問題にもなりました。
パミールはアスベストの代わりにパルプ繊維を使用しているため吸水性が高いことや、使用されている釘が腐食を起こして釘の頭がなくなってしまうことも劣化の原因として挙げられます。
層間剥離が進行すると、屋根材の強度が著しく低下し、塗装を施してもすぐに剥がれ落ちることが多いです。
塗装を行うことは基本的に推奨されておらず、早期に屋根工事を検討する必要があります。
レサス
販売期間:1999年~2006年
特徴:松下電工(現ケイミュー)が製造していたスレート材で、ひび割れや欠損、剥がれが発生しやすい特徴があります。
早い場合には築10年未満で屋根材が劣化してしまいます。熱や強風などでも割れやすく、寒暖の変化でも割れやすい屋根材です。
このため、レサスに対する塗装はむしろ劣化を早めてしまうリスクが高いといえます。
シルバス
販売期間:2001年~2003年
特徴:レサスの上位モデルであり、2001年に発売されましたが、レサスと同様にひび割れや欠損が起こりやすい屋根材で、販売してから3年で発売中止になりました。
築10年ほどでひび割れや割れ、欠けなどが発生します。
塗装を施しても長期間の耐久性は期待できず、むしろ劣化が加速する恐れがあります。
アルマ
アルマはアスファルトシングル材で、ニチハがパミールのカバー工法に推奨している屋根材です。
アスファルトシングル材ですが、スレートと間違われることがあるため注意が必要です。アルマも塗装には不向きで、特にカバー工法が推奨されるケースがあります。
【ケイミュー株式会社(旧クボタ、旧クボタ松下電工)】
コロニアルNEO
販売期間:2001年~2008年
特徴:2000年前後に製造されたノンアスベスト移行期の製品の一つです。
築15年を経過するとひび割れや欠けが発生しやすく、放置していると雨漏りが発生するケースもあります。
コロニアルNEOの特徴的な劣化症状として不規則なひび割れや大きな欠損が発生したりします。
この屋根材も塗装によって劣化が進行しやすく、塗装は避けるべきです。
グリシェイドNEO
販売期間:2001年~2008年
特徴:2001年に製造されたノンアスベストのスレート材で、層間剥離が見られることがあります。
積水ハウスなどの大手メーカーで使用されている傾向があります。
この屋根材も塗装後に早期に劣化することが多く、注意が必要です。特に、通常のスレートに見た目が似ているため、知らずに塗装してしまう事例が多く見受けられます。
アーバニーグラッサ
販売期間:2001年~2005年
アーバニーは意匠性が高いスレート材ですが、形状や材質によりひび割れが発生しやすい場合があります。
アーバニーシリーズは販売時期によってアスベストを含むものとノンアスベストのものが存在します。
1982年から1994年まで販売されていたアーバニーはアスベストを含んでおり耐久性には問題ありません。
1994年から2001年から販売されたニューアーバニーは段階的にアスベストの含有率が引き下げられています。そして2001年から販売されたアーバニーグラッサはノンアスベスト屋根であり、こちらは2005年まで販売されていました。
特にノンアスベスト版は塗装に適していません。
ザルフグラッサ
販売期間:2001年~2005年
1997年~2001年に販売されていた「ザルフ」はアスベストを含有していました。そのあとに販売された高耐候仕様の屋根材とされた「ザルフグラッサ」はアスベストを含んでおらず、築10年を経過するとひび割れや欠損が発生してきます。
塗装を行うと、割れが進行する恐れがあるため、塗装には向いていません。
【積水屋根システム株式会社】
セキスイかわらU
販売期間:1990年~2007年
1970年から販売されていたロングセラー商品です。
瓦によく似た見た目でありながら瓦の半分の重さであることと積水のブランドネームによって約50万軒の住宅に使用されていました。
アスベストの健康被害が指摘されると当時の積水屋根システム株式会社はいち早く取り組み、アスベストの代わりにビニロンという合成繊維を用いてノンアスベストのかわらUを1990年から販売し始めました。
このノンアスベストに切り替えられた後の製品は、割れやすく、ひび割れや塗膜の剥がれといった不具合が多く報告されています。
この屋根材に塗装を施すと、早期に塗膜が剥がれることが多く、再塗装を繰り返すことになり、結果的に二重に工事代金がかかってしまうことになります。
塗装できない屋根のメンテナンス方法
上記でご紹介したように、塗装ができない、適さない屋根は屋根材そのものの耐久性に問題があるため、メンテナンス方法としてはカバー工法か葺き替えが必要です。
もしも屋根材の下地まで劣化していたり、屋根材の劣化が進行しているような場合には、屋根材を撤去する葺き替え工事が必要となります。
屋根がどこまで劣化しているのか状態を見極めたうえで、適切な工事方法を選ぶことが重要です。
塗装できない屋根に塗装して3ヶ月後に飛散してしまった事例
塗装できない屋根に塗装業者から塗装をすすめられて工事の3ヶ月後に屋根材が飛散してしまった事例をご紹介します。


こちらのお客様は、近所で塗装工事を行っていた塗装業者から「屋根が劣化しているので、塗装すれば長持ちする、台風でも安心」と言われて塗装を依頼しました。
しかし工事から3ヶ月後に台風によって屋根材が飛散してしまい、お隣の外壁を傷つけてしまって大変不安になられていました。
調査したところ屋根材はグリシェイドNEOであり、耐久性に乏しいため塗装に適さない屋根材でした。


屋根と状態とご予算からヒランビー220によるカバー工法をご提案し屋根の耐久性が回復しました。
現場住所横浜市金沢区施工内容屋根カバー工法使用材屋根材:ヒランビー220(稲垣商事)
ルーフィング:タディスセルフカバー(田島ルーフィング)
塗装できない屋根に塗装をすすめてくる業者に注意してください

上の事例のように、本来なら塗装できない屋根に塗装をすすめてくる業者も実際に多いのが実情です。
ノンアスベスト屋根は見分け方が難しいこともあり、あまり屋根に詳しくない塗装業者の場合、塗装をすすめてくることがあります。
悪質な事例では塗装ができない屋根にあえて塗装をすすめてくるようなケースもあります。
先日の見積もりでは、3社ほどと相見積もりになったのですが、その中で弊社だけが塗装ができない屋根に対して葺き替えを提案していたため高額になってしまい、お客様は相見積もりになった業者から「塗装でいいのに葺き替えを提案してくる業者もいる」と言われてしまっていたようです…
こうなってくると何を信じていいのかわからなくなるところですが、損をしないために適切な工事を行うには、提案をしてきた業者に対して調査報告や使用されている屋根材をしっかり確認するようにすることが重要です。
塗装をしてはいけない屋根に塗装をしてしまうと、二重に費用がかかってしまって最終的にお客様が損をされてしまいます。一時的な出費は大きくなりますが、必要な工事をしていただくことが無駄な出費を防ぐためには大切なことです。
そのため値段だけで工事を選んでしまうと、結局損をしてしまうことがあるためご注意ください。
弊社では調査結果を提出して、写真なども見ていただいて根拠や工事の理由をお伝えしております。
ノンアスベストではないスレート屋根の耐久性も20~25年程度ですので、築20年近く経過している場合、塗装を行っても耐用年数がすぐに来てしまう可能性があります。
その場合もカバー工法や葺き替えを行う方が長い目で見た場合、トータルのメンテナンスコストを抑えることができます。
まとめ
ノンアスベストスレート屋根材は、屋根材そのものに十分な耐久性がないため、塗装は適していません。
さらに塗装を施すことで劣化が加速するケースもあります。
塗装できない屋根に塗装をすると、すぐに屋根工事が必要となってしまい、塗装代金が無駄になってしまいます。
特に、見た目が似ている「グリシェイドNEO」などは、知らずに塗装して失敗するケースが最も多いため、注意が必要です。
屋根材の劣化が気になる場合は、業者に実際に依頼する前に、屋根の状態や現在使用されている屋根材について正確に調査や診断をしてもらいましょう。
また、塗装業者だけに見積もりを依頼するのではなく、屋根専門の会社に調査を見積もりを依頼すると安心です。